復興ヒーロー紹介

震災なんかには負けないよ。おいしさでも誰にも負けないよ。

臼井 壯太朗(うすい そうたろう) / 株式会社臼福本店 代表取締役社長 / 宮城県気仙沼市

2013年6月26日

「海と生きる町」気仙沼で、日本の漁業に誇りを取り戻す

漁業を通じて、人を育み、郷土を守る

 

臼井 壯太朗(うすい・そうたろう)

株式会社臼福本店 代表取締役社長

宮城県気仙沼市

漁業会社 

 

宮城県気仙沼市で約130年の歴史を持つ漁業会社「臼福本店」の5代目である臼井壯太朗さん。水産業を担う人材育成のために、気仙沼初となる大学院誘致も進めています。復興と日本の漁業にかける思いを語っていただきました。

 

■復興への取組み

震災発生時には事務所にいました。神棚や窓枠が落ちてきて、いつもの地震とは少し違うと思いました。揺れが少しおさまって外に出ると、すでに道路が液状化して、水が噴き出していました。これは津波が来ると思い、従業員に呼びかけ、車で裏山に逃げました。

 

裏山から沖の方を見ると、水平線に白い壁のようなものが見えました。やがて津波の第一波が押し寄せました。港の重油タンクが引きちぎられ、漁船が回るようにして流されていきました。タンクから流れた重油に引火して、海が燃え、火の津波となって陸に押し寄せました。逃げ遅れた人を助け、雪の中を移動しました。従業員は無事でしたが、事務所は流されました。仮店舗をつくり、遠洋漁業に出ている船員を含む従業員の家族たちの安全確認に奔走しながら、復旧作業を進めてきました。

 

この震災で改めて感じたことが3つあります。食の大切さ、エネルギーの大切さ、そして人のつながりの大切さです。

 

食は本当に大事です。非常時には、一週間着替えなくても、何とかなります。住む場所も、雨風がしのげれば、乗り切ることができます。でも、食がないと生きられません。それを痛感しました。

 

 

■食育の大切さ

震災前から、「学校給食100%地産地消運動」を推進していました。気仙沼産のフカヒレなどを使って、調味料を含めた100%気仙沼産の給食を提供してきました。

 

気仙沼は「海と生きる」というスローガンを掲げ、スローフード宣言を全国で最初にした都市です。水産業関連会社が産業の7割を占める日本有数の漁業の街でもあります。しかし、地元の子供たちは、高校を卒業すると多くが県外に出て、漁業の後継者が不足しています。地元でつくっている加工品を、気仙沼の子供たちが食べたことがないという現象が起きています。日本人は、地元の食材の良さ、価値をもっと知るべきだと思います。

 

価値を理解するためには、子供の頃から「食」というものに対して、正しい認識を持つ必要があります。「いただきます」という言葉は、命をいただくことへの感謝です。食卓に魚が並ぶまでには、世界中の海で魚を獲る人、加工する人、料理として仕上げる人がいる。その人たちが、どんな苦労や工夫をしてきたのか。命そのものをいただいていること。そして、命を育んでくれた両親への感謝の気持ちを、忘れてはいけないと思います。昔から伝わる郷土料理や文化と共に、食育として子供たちに伝えると共に、訪れてくださる方々にも、広く発信していきたいと思っています。

 

 

■日本の漁業に誇りを取り戻す

10年ほど前から、漁業を取り巻く環境は大きく変わっています。原油高騰、漁価低迷、後継者不足といった多くの課題に直面しています。

 

特に問題を感じているのは、漁獲枠の国際規制です。日本のミナミマグロ漁獲枠は2007年から、それまでの6065トンから3000トンに半減され、水産庁の管理のもと、厳密に漁獲量を守っています。しかし、海外の漁業者すべてが漁獲量を守っているわけではありません。結果的に、低価格の輸入マグロが市場に出回っています。この状況を何とかしたいと思い、私はミナミマグロ出漁対策協議会委員、漁業者代表として、各種会議への出席などを通じて、日本の漁業を守ろうと呼びかけています。

 

漁業や農業などの一次産業は、命に直結しています。大きな視点でいえば、食料生産は国の安全保障の要でもあります。一次産業を大事にしない国では、多くの人が耕作放棄したり、かつて漁業で暮らした海を離れてしまいます。一次産業に従事する人たちが、誇りとやりがいをもって取り組むことが、食を大切にし、国土を守ることにつながると思います。

 

 

■漁業の街・気仙沼から行動し、発信する

復興に向けて、気仙沼市内の仲間と手を組み、「気仙沼海洋公園プロジェクト」を立ち上げました。気仙沼の水産業が培ってきた集大成の発信と、未来を担う人材の育成を目指して活動しています。事業構想大学院大学(東京都港区・野田一夫学長)を気仙沼に誘致し、水産業に特化した大学院開校を目指しています。

 

さまざまな業界の方々と手を携え、被災地の復興はもちろんのこと、漁業の復興、ひいては日本の復興に向けて行動していきたいと思います。日本のフラッグを掲げて漁に出て、日本の誇りを守り続けること。それが、わが臼福本店の使命だと考えています。

 

▽臼福本店のマグロを使った限定メニュー「昭福丸鮪大漁丼」は「松島さかな市場」で食べられます!
松島さかな市場:http://www.sakana-ichiba.co.jp/
臼福本店:http://www.usufuku.jp

 

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